「ちょっとぉ、ユキオと吉松さんおる?」
怒りを隠そうともせず、リブを片手に竹田が工房内へと入ってくる。
「え~?」「何?」
「あのぉ、リブこんなに適当に作ってもらっちゃ困るんやぁ。・・・ユキオこれ20分で作ったやろ?信じれんぞ?」
「ああ、ごめん」
「吉松さんも、紙型をつけたままやすってらしたでしょう?気をつけていても削れてしまうから止めてください」
「ぅ、うん、わかった」
竹田 寛、という男は、うちのサークルで最もその本質が捕らえにくい人物だ、と私は思っている。田舎くさいんだかそうでないんだか、しっかりしているんだかそうでないのか。それでいて中途半端、といってしまうには印象的過ぎるのだ。
今日も、私が些細なことで寮生と言い争う機会があったのだが、竹田が間に入って諌めてくれた。(いやすまなんだ竹田)こういうとき竹田は極めて世渡り上手に、いやもうおっしゃるとおりですとイエスマンになる・・・訳ではない。先の例にもあるが、言うとこはしっかり言うのだ、「いやでもぉ、そこは~だと思いますよ」などなど。しかし決して意固地ではない。普段もそうだが、こっちがきっちり反論すると、「う~ん、そうかもしれんね」とこっちが拍子抜けしてしまうくらいすぐ折れる。
これだけ書くと優柔不断な感じに聞こえるかもしれないが、全然そんなことはない(竹田が優柔不断なんて言ったらサークルの皆に笑われかねん)。ボクシングで言うなら、凄いハードパンチャーでビシバシ打って来るのに、こっちの反撃は簡単に受け流してしまう感じ、というのがぴったりかなと思う。いい意味でマイペース、自分の意見はきっちり持っているけれども、無理にそれを通そうともしない。自分の独特のリズムを持っている。彼と話していると私たちも、そんなリズムに乗せられてしまうのだ。
また彼、竹田は会長に対しては敬語を徹底している。私などが間に入っていても、見事に言葉を切り替えて見せるのだ。会長自身はそのことに戸惑いを覚えているようだし、他のメンバーは「あいつ体育会系だから」の一言で済ませているが、私はそう単純なことではないと考えている。というのも、竹田は会長に対して敬語は欠かさないものの、異論がある場合には友人のように遠慮なく文句を言うということもあるからだ。彼にとって会長は、目上でありながら友人である、と言える。この複雑な状況に至った理由はなんなのか。
これは彼と話してきたことからの推測だが、彼は会長、と言うものをそのように見ているということなのだと思う。
そもそもうちのサークルは、学年と言う括りを除くと非常に上下関係に乏しい(むしろ除かなくてもだ)。何しろ同回生は一年目からの「盟友」だ。しかしそれでも、形として会長、と言う役職を据えねばならない。物事を常に多数決で決めるわけにもいかない、最終的な決定者は必要だからである。しかし今まで対等だった人たちに対して、突然あれこれ命令できようはずもない。現会長も、事の決定では過剰に民主主義的になるところがある。竹田はそのことに対する憂いがあったのだろう、「もっと会長らしくして欲しいんやぁ」と洩らすことがあった。
彼は敬語を使うことで、彼女は我々の上に立つ「会長」なのだと彼女に、そして私たちに示しているのではないだろうか。だが、その言葉の内容は対等に話すときとなんら変わりない。文句も言うし世間話もする。会長は「会長」でありながら「仲間」でもある。そんな自分なりの「サークルのあり方」についての彼なりの意見を、普段の態度で表しているのではないだろうか。
言うなれば、彼はサークルと言う腰骨を支える椎間板と言ったところか。・・・願わくは、こちらは腰痛を起こすことのないよう、祈りたいものであるが。
怒りを隠そうともせず、リブを片手に竹田が工房内へと入ってくる。
「え~?」「何?」
「あのぉ、リブこんなに適当に作ってもらっちゃ困るんやぁ。・・・ユキオこれ20分で作ったやろ?信じれんぞ?」
「ああ、ごめん」
「吉松さんも、紙型をつけたままやすってらしたでしょう?気をつけていても削れてしまうから止めてください」
「ぅ、うん、わかった」
竹田 寛、という男は、うちのサークルで最もその本質が捕らえにくい人物だ、と私は思っている。田舎くさいんだかそうでないんだか、しっかりしているんだかそうでないのか。それでいて中途半端、といってしまうには印象的過ぎるのだ。
今日も、私が些細なことで寮生と言い争う機会があったのだが、竹田が間に入って諌めてくれた。(いやすまなんだ竹田)こういうとき竹田は極めて世渡り上手に、いやもうおっしゃるとおりですとイエスマンになる・・・訳ではない。先の例にもあるが、言うとこはしっかり言うのだ、「いやでもぉ、そこは~だと思いますよ」などなど。しかし決して意固地ではない。普段もそうだが、こっちがきっちり反論すると、「う~ん、そうかもしれんね」とこっちが拍子抜けしてしまうくらいすぐ折れる。
これだけ書くと優柔不断な感じに聞こえるかもしれないが、全然そんなことはない(竹田が優柔不断なんて言ったらサークルの皆に笑われかねん)。ボクシングで言うなら、凄いハードパンチャーでビシバシ打って来るのに、こっちの反撃は簡単に受け流してしまう感じ、というのがぴったりかなと思う。いい意味でマイペース、自分の意見はきっちり持っているけれども、無理にそれを通そうともしない。自分の独特のリズムを持っている。彼と話していると私たちも、そんなリズムに乗せられてしまうのだ。
また彼、竹田は会長に対しては敬語を徹底している。私などが間に入っていても、見事に言葉を切り替えて見せるのだ。会長自身はそのことに戸惑いを覚えているようだし、他のメンバーは「あいつ体育会系だから」の一言で済ませているが、私はそう単純なことではないと考えている。というのも、竹田は会長に対して敬語は欠かさないものの、異論がある場合には友人のように遠慮なく文句を言うということもあるからだ。彼にとって会長は、目上でありながら友人である、と言える。この複雑な状況に至った理由はなんなのか。
これは彼と話してきたことからの推測だが、彼は会長、と言うものをそのように見ているということなのだと思う。
そもそもうちのサークルは、学年と言う括りを除くと非常に上下関係に乏しい(むしろ除かなくてもだ)。何しろ同回生は一年目からの「盟友」だ。しかしそれでも、形として会長、と言う役職を据えねばならない。物事を常に多数決で決めるわけにもいかない、最終的な決定者は必要だからである。しかし今まで対等だった人たちに対して、突然あれこれ命令できようはずもない。現会長も、事の決定では過剰に民主主義的になるところがある。竹田はそのことに対する憂いがあったのだろう、「もっと会長らしくして欲しいんやぁ」と洩らすことがあった。
彼は敬語を使うことで、彼女は我々の上に立つ「会長」なのだと彼女に、そして私たちに示しているのではないだろうか。だが、その言葉の内容は対等に話すときとなんら変わりない。文句も言うし世間話もする。会長は「会長」でありながら「仲間」でもある。そんな自分なりの「サークルのあり方」についての彼なりの意見を、普段の態度で表しているのではないだろうか。
言うなれば、彼はサークルと言う腰骨を支える椎間板と言ったところか。・・・願わくは、こちらは腰痛を起こすことのないよう、祈りたいものであるが。
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現状この責任感の強さを誇る竹田ですが、サークルを引退したらメルアドを変えて身を隠すんだそうです。さっぱりこいつが掴めません。
ちなみに彼には一緒の高校に行こうね♪と昔言われたという甘酸っぱい思い出があるそうですが、その話はまたいずれ。
現状この責任感の強さを誇る竹田ですが、サークルを引退したらメルアドを変えて身を隠すんだそうです。さっぱりこいつが掴めません。
ちなみに彼には一緒の高校に行こうね♪と昔言われたという甘酸っぱい思い出があるそうですが、その話はまたいずれ。
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